浜田理惠は日本のソプラノ歌手、現在東京芸大の講師でもある彼女は間違えなく日本国内にとどまらず
世界的に見ても一流のソプラノである。
オペラの役としては、カルメンのミカエラ、トゥーランドットのリュー辺りでオペラファンにも記憶されていると思うが、
彼女の最も優れているのは近現代のフラインス歌曲などの歌唱である。
とは言っても、残念ながら動画がないので、今回は蝶々さんの演奏から紹介する。
プッチーニ作曲 蝶々夫人のフィナーレ
瑞々しく劇的な表現を求め過ぎて破綻したりしない、それでも十分にドラマが伝わる演奏ではないだろうか?
世界的に見た場合、日本人の蝶々さん歌いとしては浜田理恵より、大村博美の方が有名である。
フィナーレの映像が無かったので有名な、「ある晴れた日に」を聴いて頂きたい。
いかがだろうか?
当然曲が違うので、一概に比較は難しいが、それでも浜田理恵の方が圧倒的に上手いと言える。
はっきり言って全然違うのである。
こちらが大村博美の中低音での”a”母音
浜田理恵の中音域の”a”母音
浜田は常に口腔の空間が潰れないフォームに対し、大村は時々フォームが著しく乱れる。
声にも如実に現れているが、レガートにしても浜田の方が遥かに滑らかである。
勿論役柄、場面、セリフによって適切な表現や音色が異なるので、どれが間違っているとか正しいとは言えないので、
蝶々さんの全く同じ発音を別の歌手で切り取ってみよう
マリア・キアーラ(下写真)上写真の大村博美と全く同じ個所の発音
戦後を代表するイタリア人ソプラノ、マリア・キアーラの写真を見て頂ければ、
大村と浜田どちらのフォームに近いかは一目瞭然。
上の前歯を見せて歌うというのは、それだけでマイナスが大きい。
(そういうフォームでも素晴らしい歌手はいるにはいますが)
浜田理恵はどんな曲を歌っても過剰な表現を避け、コントロールの効く範囲内で冷静に歌う歌唱IQと言えば良いのか、
そういうものが非常に高い。
抜群の適応力と誇張しない表現は、
やはりオペラより、詩に寄り添いながら、作曲家の意図を汲み取る歌曲の解釈でこそ真価を発揮すると言える。
武満徹:環礁 / 外山雄三指揮東京都交響楽団、浜田理恵(S)
後は現代作品の演奏も力を入れており、とても素晴らしい
こちらの演奏も非常に緊張感に満ちていて、一点のブレもない歌唱を聴かせている。
現在は芸大で後進の指導にもあたっているので、どのような歌手を育てるのか、教師としても注目していきたい。
お勧めCD
YOUTUBEにはないですが、フランス歌曲は録音があります。
日本人でここまで歌える人が出てくるとは嬉しいことですね!
※なお、大村博美も日本を代表する素晴らしい歌手であるという前提の上でこの記事を書いています。
スポーツの世界では、優れた選手同士でフォームを比較することは日常的に行われているにも関わらず、
声楽ではそういうことが全く行われないという方が不自然だと私は考えていますので、今後もこのような比較は記載していきます。
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